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宮沢賢治ら3人の花見、まねっこしてみた

宮沢賢治と東京

2024年4月13日、今日は宮沢賢治ら3人の花見を、ゆかりある3人で真似してきます!

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賢治ら3人とは?

大正10(1921)年4月12日、家出して東京に住んでいた賢治がどうやら花見をしているようです。それも、一緒に花見をしていたのは、盛岡の学生時代の「恩師」と「親友」です。

大正10年、関先生の足取りで花見の地へ!

王子駅で待ち合わせ。なんと、お相手は以前のナギノートの探検記事を見つけていただいた、賢治さんの恩師「関豊太郎博士」の子孫の方です!

<その時の探検記事>

というわけで、再びその時のルートを宮澤俊司氏の案内で3人で回っていきます!ご先祖様の思い出の地をご案内〜♪

飛鳥中学校、旧関先生の家

当時、関先生が住んでいた場所は、北区立飛鳥中学校になっています。上中里駅・西ヶ原駅が開業前なので、王子駅が最寄り駅です。ここから今日の探検を始めます!

その前に、関先生の勤め先である「国立農事試験場」の跡地へ。ご先祖様の通勤を追体験、徒歩4分の通勤路。

「どういう経緯や出会いがあって、子孫は東京を離れたのかな…って思いながら見てました」石碑しか無いのですが、喜んでいただけて良かった♪

東京さくらトラム(都電荒川線)

路面電車に乗って王子駅から小台駅へ。

宮澤さん「大正10年当時も存在した路線ですから、関先生・賢治・嘉内の3人も乗ったことでしょう」賢治、電車好きですしね♪

現・荒川に到着!

商店街を抜けて荒川河川敷に到着!昭和5年に完成した「人工河川」です。今は水が入っていますが、当時は放水路として建設中でした。ここは、「川」ではなかったのです。

振動で発電している高速道路、「五色桜大橋(ごしきざくらおおはし)」を向かいに見ながら、江北橋(こうほくばし)を渡ります。この「五色桜」というのは特定の品種名ではなく、「沢山の種類の桜」という意味です。

五色桜

旧荒川堤の生き残りの桜が迎えてくれるエリアに入りました。ピンクの濃い薄い、黄緑の花、一重八重…色も形も異なる花が並んでいます。これが「五色桜」です。

開発や公害でほとんどの桜が失われましたが、かつてここ荒川土手は、多品種の桜の並木が熊谷から千住まで続いている名勝でした。

宮澤さんは、宮沢賢治・家出在京時の桜に関する7つの短歌について研究されています。

桜に関する7つの短歌
  • エナメルのそらにまくろきうでをささげ 花を垂るるは桜かあやし
  • 青木青木はるか千住の白きそらを になひて雨にうちどよむかも
  • かゞやきのあめにしばらくちるさくら いづちのくにのけしきとや見ん
  • ここはまた一むれの墓を被ひつゝ 梢暗みどよむときはぎのもり
  • 咲きそめしそめゐよしのの梢をたかみ ひかりまばゆく翔ける雲かな
  • 雲ひくく桜は青き夢の列 は酔ひしれて泥洲にをどり
  • 汝が弟子は酔はずさびしく芦原に ましろきそらをながめたつかも

花見の様子にしてはどこかアンニュイな様子が漂っています。この時期、賢治さんと嘉内の関係は微妙でした。一緒に花見ができたのは、関先生の呼びかけがあったからではないでしょうか。

宮澤さんが花見のメンバーを特定していった資料の一つ、短歌の下書き原稿です。「甲斐(かい)より来ける」とあって、山梨県在住の保坂嘉内と特定されます。

元々は道路も無く、こんもりとしていて森のようだったそう。「ときはぎのもり(常盤木の森)」ここかな?

地福寺墓地。「一むれの墓(一群の墓)」とはこちらのよう。

わぁー、綺麗な桜並木♪ここからは昔の荒川土手、桜が残っています!

かつては花見の名所にあった茶屋であり、「荒川土手の桜の保存」活動をしてきた酒屋「東屋本店」。宮澤さんが「ここ、ビールあるよ」と言うので入ると…

わぁぁ、故郷岩手の「銀河高原ビール」!しかも生です。冷えたグラスで出てきました。嬉しくなっちゃう♪

この出会いに乾杯♪大正10年の花見の時とは気候も桜の本数も変わってしまいましたが、桜の元で出会い・再会を喜ぶひとときは同じではないでしょうか?

おぉ、「天の川」!種類の多さが見所だった荒川堤、珍しい銘の桜も。「銀河」を飲んで「天の川」を見る。最高のお花見です♪

保坂嘉内の日記

宮澤さん、保坂家で嘉内直筆の日記を確認したのだとか。4月12日のページには桜のことが書かれています。賢治の短歌に共通する『桜の花がハラハラと散る』描写も。

『春らしい公園のひるどき 陽は柳にも ランカンにも 限りなく温かくふりそゝぐ桜の花は散る夕べ』(嘉内の日記より)

「宮沢賢治が見た桜」展へ

なんと、今回は宮澤さんが展示協力をしている「宮沢賢治が見た桜」展が開催中とのことで、足立区江北地域学習センターへ。

ここまで宮澤さんにご案内いただいた内容が、詳細な資料と吉原聖子氏の華やかなイラストと共に紹介されています。

短歌7首の肉筆稿、なかなか揃って見ることは無いので貴重な機会です!

泥洲で酔って踊っている「汝」は関先生。「ナギノートを読んだ時、恐い厳しい人と聞いていたので、豊太郎が酔って踊るというのに驚いたんですよ」と。酔ってご機嫌で豊太郎について話す子孫の方は、この日の関先生の様子と重なるものがありました。

足立区江北地域学習センター「宮沢賢治が見た桜」展、2024年5月31日まで開催中です。

日暮里舎人ライナー江北駅

あえて関先生の足取りをなぞったため、王子駅から6時間の移動になりましたが、「足立区江北地域学習センター」へはこちらの江北駅が最寄りになります。(ここから徒歩15分)

日暮里舎人ライナーから見える景色は高架の高速道路ばかり。今日は、その下に隠された桜の里を探検し、賢治さんを通じて、初対面でも和気あいあいと旧知の仲のように語り合う時間を過ごしました。なんと歩いた総距離14km!飲んだ生5杯。実はなかなかハードな「お花見」でした。

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