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3日目①/4:堀内〜普代、車で宮沢賢治三陸旅行をたどってみた

宮沢賢治と岩手

つづきです

おはようございます!2025年11月13日 5:15am、暁穹を求めてホテルを出発します。

暁穹

6:00am大槌町にて暁穹を撮影。まだ暗い部分には賢治さんが恋する土星も、他の星も無くて月だけがいます。けれども美しい!あまりに綺麗で離れ難かったので、日の出も見ることにします。

6:14am日の出。光の道が差して、とても綺麗です。

今日は列車で来た道を戻って、車で改めて回り直します。

宮沢賢治詩碑

賢治さん三陸旅行のエリアには現在9基の宮沢賢治詩碑があり、そのうち8基が1925年1月の旅に関係したものです。3日目は車で堀内〜大槌の7基の詩碑を巡ります。3日目の行程は情報が多いため、3回に分けて紹介します。

3日目①/4

1. 普代村・堀内駅徒歩7分(まついそ公園内):詩碑「敗れし少年の歌へる」
2. 普代村・普代駅車で約10分(黒崎展望台):詩碑「発動機船 一」

3日目②/4

3. 田野畑村・田野畑駅徒歩1分(田野畑駅前広場):詩碑「発動機船 三」
4. 田野畑村・田野畑駅徒歩5分(本家旅館庭内):詩碑「発動機船 一」
5. 田野畑村・島越駅徒歩2分(島越ふれあい公園内):詩碑「発動機船 第二」

3日目③/4

7. 大槌町・浪板海岸駅徒歩7分(三陸花ホテルはまぎく駐車場空き地):詩碑「暁穹(ぎょうきゅう)への嫉妬」
8. 大槌町・大槌駅下車1分(大槌駅前広場):詩碑「旅程幻想」

4日目①/4

9. 釜石市・陸中大橋駅徒歩1分(陸中大橋駅前空き地内):詩碑「峠」

大沢橋梁で停車中の三陸鉄道車両。車窓から見た赤い橋から撮影!

「アイドルになりたーい」堀内(ほりない)駅

NHK朝ドラ『あまちゃん』で、ユイちゃんが「アイドルになりたーい」と叫んでいた駅「堀内駅」につきました。

まついそ公園:宮沢賢治詩碑・文語詩「敗れし少年の歌へる」

堀内駅から徒歩7分の場所にある「まついそ公園」に1つ目の詩碑があります。

公園入り口の石碑に「賢治 濱善丸で南へ」と刻まれています。この反対面が詩碑です!

SpecialThanks!:Photo by  momo

おぉぉぉ…岩手入りして3日目でようやく1つ目の詩碑に対面しました。大前提として、私たち後世の人が「賢治の詩」と呼んでいる口語自由詩は、賢治さんにとっては「心象スケッチ=詩ではない」です。賢治さんの定義における詩作品は文語詩で書かれています。文語詩「敗れし少年の歌へる」は「暁穹への嫉妬」をベースにした改作ですので、「暁穹への嫉妬」がスケッチ、「敗れし少年の歌へる」が作品になります。

敗れし少年の歌へる
      宮沢 賢治
ひかりわななくあけぞらに
清麗サフィアのさまなして
きみにたぐへるかの惑星の
いま融け行くぞかなしけれ

雪をかぶれるびゃくしんや
百の海岬いま明けて
あをうなばらは万葉の
古きしらべにひかれるを

平成 十六年九月吉日
普代村長 深渡 宏

それでは、船で南へ向かった賢治さんを辿って南下します!

普代駅周辺「アビーロード商店街」へ行ってみよう!

次の詩碑は「黒崎展望台」ですが、間の普代駅周辺が観光のオススメポイントなので立ち寄ってみましょう♪普代駅は「道の駅青の国ふだい」と一つの建物になっていてとても便利!列車・バス・車のターミナルとして機能しています。

歩いて10分ほどの距離にある普代アビーロード商店街には気になるお店が並んでいます。こちらは「上神田精肉店(かみかんだせいにくてん)」。地元のお肉屋さんに観光客がなぜ?と思われるかもしれませんが…

じゃーん!お肉屋さんの揚げたて「カレーパン」です♪

9時の開店と同時に揚げていただいた、外はザクっと中ホクホク、あっという間に1個食べてしまいました。ご主人、爽やかな笑顔が素敵♪

他のメニューも何か食べてみたくなり、追加オーダー。ご主人、詩碑の情報もお詳しい!

TV「マツコの知らない世界」に出たという普代村の道の駅のメンチカツバーガーの中に入っている「昆布入りのメンチカツ」。私、この回見てました!これも外カリッと、中から熱々の肉汁が出て昆布もいい味出してます。美味しい!観光客にもオススメしたい地元のお肉屋さんです。

食後は、斜め向かいの三船製菓にて、ツインカラーでうずまきの「かりんとう」をおやつに入手。岩手沿岸のかりんとうって、棒状ではなく平たいのです。これ、パリッとカリカリで美味しい♪それでは、カリカリ食べながら「黒崎展望台」へ出発!

東日本大震災の津波から町を守った普代水門を見て、海沿いに南下します。

津波は恐ろしい、けれど海は美しくて恵みをもたらしてくれる存在でもあって…移動の車内では東日本大震災のことやその後のことを話しています。ここ数日また地震が頻発していますが、今日の海はただただ綺麗です。

黒崎展望台

黒崎展望台に着きました。海から上がってくる風が強いです。

宮沢賢治詩碑「発動機船 一」…と、あれ?浜垣誠司さん!? あれれ…詩碑好きが高じて、遂に詩碑になってしまいましたか??

WEBサイト「宮澤賢治の詩の世界」を運営されている浜垣さん。賢治さんの難解な表現や時代背景を、資料とともに理論的にわかりやすく解説されています。私も賢治さんを理解する上でとても助けられています。

曲をつけられていたのはサイトで拝見しておりましたが、まさか石碑になっているとは!

SpecialThanks!:Photo by  momo

石碑をまじまじと見つめた後、石碑と一緒に賢治さんが船に乗ってリアス海岸の岬を回り込んできた景色を見つめます。

「発動機船 一」 の詩碑はピカピカに磨かれていて、機船が走ってきた海の景色を映しています。

発動機船 一

うつくしい素足に
長い裳裾をひるがへし
この一月のまっ最中
つめたい瑯玕(ろうかん)の浪を踏み
冴え冴えとしてわらひながら
こもごも白い割木をしょって
発動機船の甲板につむ
頬のあかるいむすめたち
  ……あの恐ろしいひでりのために
     みのらなかった高原は
     いま一抹のけむりのやうに
     この人たちのうしろにかゝる……
赤や黄いろのかつぎして
雑木の崖のふもとから
わづかな砂のなぎさをふんで
石灰岩の岩礁へ
ひとりがそれをはこんでくれば
ひとりは船にわたされた
二枚の板をあやふくふんで
この甲板に負ってくる
モートルの爆音をたてたまゝ
船はわづかにとめられて
潮にゆらゆらうごいてゐると
すこしすがめの船長は
甲板の椅子に座って
両手をちゃんと膝に置き
どこを見るともわからず
口を尖らしてゐるところは
むしろ床屋の親方などの心持
そばでは飯がぶうぶう噴いて
角刈にしたひとりのこどもの船員が
立ったまゝすりばちをもって
何かに酢味噌をまぶしてゐる
日はもう崖のいちばん上で
大きな榧(かや)の梢に沈み
波があやしい紺碧になって
岩礁ではあがるしぶきや
またきららかにむすめのわらひ
沖では冬の積雲が
だんだん白くぼやけだす

看板まで降りて覗き込むと、「ネダリ浜」の白い岩礁が見えました。確かに、あそこだけが白いです。綺麗!

ネダリはアイヌ語由来の名称で「流木が溜りの・高岸の所」という意味だといわれています。

「発動機船 一」の作品の舞台が、この普代村「ネダリ浜」であるという説の他に田野畑村の「羅賀港」との説もあり、なんと同じ作品の詩碑が隣の村にも建っているのです!南下して隣村の詩碑を見に行ってみたいと思います。

つづく