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江刺金札米

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誕生日プレゼントで米をいただきました♪

大正時代の復刻パッケージも素敵ですが、別の理由で私には江刺金札米には思い入れがあるのです。

広報おうしゅう3年11月本号(https://www.city.oshu.iwate.jp/site/libraly/46848.html)より

江刺金札米は「陸羽132号」だったのです。この名前でピンときた方もいると思います。

一〇八二

〔あすこの田はねえ〕

一九二七、七、一〇、

あすこの田はねえ
あの種類では窒素があんまり多過ぎるから
もうきっぱりと灌水みづを切ってね
三番除草はしないんだ
  ……一しんに畔を走って来て
    青田のなかに汗拭くその子……
燐酸がまだ残ってゐない?
みんな使った?
それではもしもこの天候が
これから五日続いたら
あの枝垂れ葉をねえ
斯ういふ風な枝垂れ葉をねえ
むしってとってしまふんだ
  ……せはしくうなづき汗拭くその子
    冬講習に来たときは
    一年はたらいたあととは云へ
    まだかゞやかな苹果のわらひをもってゐた
    いまはもう日と汗に焼け
    幾夜の不眠にやつれてゐる……
それからいゝかい
今月末にあの稲が
君の胸より延びたらねえ
ちゃうどシャッツの上のぼたんを定規にしてねえ
葉尖を刈ってしまふんだ
  ……汗だけでない
    泪も拭いてゐるんだな……
君が自分でかんがへた
あの田もすっかり見て来たよ
陸羽一三二号のはうね
あれはずゐぶん上手に行った
肥えも少しもむらがないし
いかにも強く育ってゐる
硫安だってきみが自分で播いたらう
みんながいろいろ云ふだらうが
あっちは少しも心配ない
反当三石二斗なら
もうきまったと云っていゝ
しっかりやるんだよ
これからの本当の勉強はねえ
テニスをしながら商売の先生から
義理で教はることでないんだ
きみのやうにさ
吹雪やわづかの仕事のひまで
泣きながら
からだに刻んで行く勉強が
まもなくぐんぐん強い芽を噴いて
どこまでのびるかわからない
それがこれからのあたらしい学問のはじまりなんだ
ではさやうなら
  ……雲からも風からも
    透明な力が
    そのこどもに
    うつれ……

陸羽132号、賢治の米といわれています。冷害に強く、賢治さんが推奨していた品種だからです。

平成に入ってデビューしたひとめぼれが冷害に強いこともあってどんどん置き換わり、江刺金札米ひとめぼれになりましたが、大正10年から平成初期まで江刺金札米は陸羽132号でした。

ひとめぼれを初めて食べたときに、粒が大きくもっちりと美味しいお米に惚れ込んで「こっちがいい♪」と喜んだのは子どもだった私もです…中校生だったでしょうか。その後、賢治研究の一環で陸羽132号を食べることになった時、やや小粒だなと思いながらも食べた感想は「懐かしい」でした。(某漫画の四万十川の鮎を食べた京極さんの味判定が出来ない感覚が私にもあったのかと驚きました。)幼児期に日々食べて慣れ親しんだ米が陸羽132号でした。岩手の昭和の子です。

江刺で陸羽132号を賢治復刻米として出してくれたら面白いなと思いつつ、プレゼントでひとめぼれもらって喜んでいます。ひとめぼれも最近では交配してスター性のある子孫(ささ結さん)が生まれているので、いつかは過去の品種になってしまうのでしょうね。